此処はツバサの双児吸血鬼を愛する管理人の、妄想の捌け口となっております。
9割方女性向け表現を含みますので、苦手な方は今すぐブラウザバックを。
双児への愛と欲望に満ちた同志の方は、どうかABoUT&伽の案内処へ。
BoMBは1000毎、又は並び、又は階段。おまけでイベント日付。詳細はABoUTにて。
では、とびっきりの悪戯をどうぞご覧下さい。。>>>Since.2007/10/31(Wed)
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ここの小説はイベント毎に期間限定でFreeにします。
イベント好きな昴流と、それに付き合わされる神威が次元を渡ってます。
そこはかとなく連作風味ですが、一話読み切りでも話は通じます。
よくCLAMPキャラが無記名で出張します。誰なのか想像しながら読んでみて下さい♪
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01【VAMPIRE's HaLLOWEEN!】(Free期間終了)
⇒サイト開設&ハロウィン記念小説。やたら長いですので覚悟してお読み下さい;;
02【】
03【】
04【VAMPIRE's VALENTiNE!?】(Free期間終了)
⇒色々ありえません。キャラ壊れ&捏造注意報発令!!どんな内容でも許せる方はどうぞ。
当サイトの小説一覧です。お好きなところへどうぞ。
日々増えていく予定。
尚、各カテゴリ内ToPにも一覧があります。(WHAT's NeW/日々の呟きは二番目の記事から)
▼虚偽に戯る夜の伽
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▼光帯びたる昼の伽
当サイトの捏造設定を(あまり)含まない、原作風味のツバサ短編小説です。
ただし「ツバサにまだ出ていないキャラや次元の設定」は捏造に含みませんのでご注意を。
ほんの僅かな捏造も許せない方は今すぐ退避して下さい。
上に来るほど新しい物です。
【短編】
・閑話
⇒[07]様の双児イラリク企画に自分で増やしたネタからサルベージ。
・二人の距離(双児処女作~WHITE.ver)
⇒一つの話からWHITEとBLACKに分化。BLACK.verはDARK部屋の「君の其の感情さえ」です。
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▼平行たる朝焼の伽
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▼輪郭辿る黄昏の伽
強奪したお題に沿って展開します。
長さは如意棒、風味は各種、キャラが平行世界の住人に移籍してたり様々です。
ごった煮に耐えられる人のみどうぞ。
上に来るほど新しい物になります。
【リライト様お題】
01.コント的学生生活10題[1,2,3]⇒設定ごった煮要注意。要望次第でSSにサルベージするかも。
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▼DARK TWiNS
冷酷・冷血・酷薄と三拍子揃った双児が支配しています。
執着するのは片割れにだけ、それ以外はせいぜい使い捨ての駒か道端の石ころ以下の認識。
当然の如く捏造過多です。(本能と執着=愛、これ基本)
上に来るほど新しい物です。
【短編】
・君の其の感情さえ(双児処女作~BLACK.ver)
⇒一つの話からWHITEとBLACKに分化。WHITE.verは昼の伽部屋の「二人の距離」です。
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▼VAMPIRE's ANNiVERSARY
ここの小説はイベント毎に期間限定でFreeにします。
イベント好きな昴流と、それに付き合わされる神威が次元を渡ってます。
そこはかとなく連作風味ですが、一話読み切りでも話は通じます。
よくCLAMPキャラが無記名で出張します。誰なのか想像しながら読んでみて下さい♪
01【VAMPIRE's HaLLOWEEN!】(Free期間終了)
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02【】
03【】
04【VAMPIRE's VALENTiNE!?】(Free期間終了)
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▼xxxCROSS WoRLD
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▼終末に差す陽だまりと陰
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▼ジャンル無法地帯
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▼分類無き欠片
小ネタとか考察とかとか。
小説未満の物とかが詰め込まれる…かも。
上に来るほど新しい物です。
・現実逃避SS~X星神/After
⇒試験勉強の息抜きに書いたものです。気付いたらうっかり星神処女作でした。(予定外)
08/02/19にAfter追加。
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「Trick or Treat?」
「……………は?」
部屋に帰って来た片割れにそう問いかけられ、神威は虚を突かれて黙り込んだ。
…すぐに反応できなかった神威を責めるものはいないはずだ、多分。
【VAMPIRE's HaLLOWEEN!】
「あれ、意味通じなかった?」
「…………違う」
「じゃあ、どうしたの?黙り込んじゃって」
ベッドに腰掛けている神威の顔を覗き込みながら、小首を傾げて問いかける。
本気で訊いて来る相手をどうしたらいいだろうかと、神威は内心頭を抱えてしまった。
今の次元に降り立った時、二人は少し羽休めをしようと人間の衣服を纏って街で宿を取った。
立ち寄った街に一歩入ると、街中が祭り前独特の賑やかさに溢れ、興奮と期待の眼差しをした子供達が街を走り回っていた。
何かあるのかと宿泊先の主人に聞けば、明日に万聖節を控えているのだと言われた。
この祭りを知らないなんて珍しいと軽く驚かれたので、旅人なので行事に疎いのだと返せば、主人は更に詳しく話を教えてくれた。
その教えてくれた内容と言うのは確か…
「魔除けの祭りみたいなものじゃなかったか?」
さっき昴流が言った問いかけは、お化けに仮装した子供達が色んな家でお菓子を強請る時に言うのだと聞かされた。もちろんその仮装の理由も。
「魔物が祝ってどうするんだ…」
人々が仮装するのは、あの世とこの世の境目がなくなる日に、死霊に魂を取られないよう相手の目を誤魔化すためだ。
それを聞いた時は無意味だと思ったが、これはそれ以上じゃないだろうか。
何せ目の前に、誤魔化されるわけでもなく、一緒に祭りを楽しもうとする魔物が居るのだから。
二人は正真正銘の吸血鬼であり、魔物であるという意味では死霊に分類されるだろう。 なのにどうして一緒に祝う気になれるのか。神威は片割れの思考を理解する事が出来なかった。
だと言うのに、
「だって、面白そうじゃない?」
けろりと返された言葉は単純明快で、更に頭を抱えさせるようなものだった。
「…………」
「ねぇ神威、Trick or Treat?」
馬鹿か、と思う。
ちなみに、これを他の人間が昴流に向けて言ったなら瞬殺する。
永い時を共に過ごしてきた自分だからこそ言っていい言葉だ。
「馬鹿なんて酷いよ」
「勝手に思考を読むな」
年甲斐もなく頬を膨らませて詰め寄ってくる。
普通この外見年齢の男がやったら気持ち悪いと切り捨てられる仕草なのに、妙に似合っているから困りものだ。
「神威だっていつも勝手に覗くじゃない」
「その度に文句を言ってる奴が覗くな」
「だからお相子でしょ♪」
違うと思う。
だが、こういう時の昴流に何を言っても無駄だと長年の経験で分かっている神威は、それをさらりと流した。
たまにこの片割れは妙に幼くなる。その切欠は色々あるが、とにかく昴流の好奇心に触れるものがあるとスイッチが入るのだ。
今回は何が引き金かは分からないが、自分が部屋篭もってる間に何かに触発されたのだろう。
「あのね、ここのご主人の子供達が、一緒にお祭りに参加しようって」
今回の理由はそれかと、神威は内心溜め息を吐いた。
何でも、先ほど自分達が万聖節を教えてもらった時、近くでそれを聞いていた主人の子供達が二人に興味を示し、自分達のグループと一緒に行かないかと誘ったらしい。
昴流を誘った子供達は十歳くらいの双子の姉妹だった。
利発そうな黒髪翠目のショートッカットの女の子と、大人しそうな長い栗色の髪と目をした女の子が、昴流の服の裾を掴みながら期待に満ちた目で誘いかけて来たのだ。
性格も正反対で見た目も全く似ていないその子達を見て、思わず昴流は幼い頃の自分と神威を思い出し、つい一緒に参加させてもらうと返事をしてしまった。
ちなみに神威がこの話を知らなかったのは、説明を聞き終わってすぐに一人で部屋へと行ってしまったからだ。きっとその場に居たなら、断固として拒んだだろう。
何故あの時自分だけで部屋へ行ってしまったのかと、今更ながらに悔やまれる。
「だったらお前だけでやってくればいいだろう」
「もう一人のお兄ちゃんともやりたいって言ってるんだよ」
「そんなの、俺の知った事じゃない」
「だって、二人とも神威が参加するのを楽しみにしてるんだよ?」
「知るか。だいたい衣装はどうする。明日はもう次の次元に渡るだろう」
「いつもの服を着れば充分仮装になるし、お祭りが終わった後そのまま次元を渡ればちょうど良いじゃない」
どちらにも支障はないと言い切る片割れに、神威はこめかみを押さえ深々と嘆息した。
「何だって今回はそんなに絡むんだ」
「ん~……熱心に頼まれたから、っていうのもあるかな」
先ほど誘われた時、確かに二人はもう一人のお兄さんともやりたいと言ったが、どうしても神威とやりたいと言ったのは、姉の後ろに隠れるようにしていた妹だった。
大人しそうな彼女は姉の後ろからそっと顔を覗かせながら、揺れる目で必死に昴流を見上げて言ったのだ。
『あの……あの、もう一人のお兄さんも、い、一緒に…来てくれますか?』
外見と違わず内気であろう女の子が、それでも精一杯の勇気を込めて訊いてくるのがいじらしくて、なるべくなら希望を叶えてあげたいと思ってしまったのだ。
まぁ、一番の理由はそれではないのだが。
「はっきりしない言い方だな。他にも何かあるのか?」
「うん」
あっさりと肯定する昴流に、神威は肩透かしを喰らった気分になった。
「…なら、何が理由なんだ」
「決まってるじゃない」
そう言い切ると、神威の頬に手を添えしっかりと目線を合わせる。
そして、まるで陽だまりのように笑いながら言うのだ。
「僕が神威と一緒にやりたいからだよ」
「二人で色々なものを見たり聞いたりしながら、いつもとは違う時間を過ごしてみたいんだ」
「……ダメかな?」
一瞬、呼吸を忘れそうになった。
ただでさえ片割れに対しては甘いというのに、こんな理由を笑顔付きで言われたらどうやって拒めるというのだろう。
神威は溜め息を一つ吐いて、内心で白旗を上げた。
「………今回だけだぞ」
ぼそりと呟くように言葉を落とせば、昴流は愛しい片割れに有り余る感謝を抑え切れずに抱きついた。
「ありがとう、神威!」
耳元で更にもう一つ嘆息が聞こえてきたが、それでも背中に回される腕が無性に嬉しかった。
だから、もっと、と欲張ってしまう。
昴流は近くにある耳に、息を吹き込むように言葉を紡いだ。
「ねぇ神威、僕さっき言ったよね」
「っ…何、を」
「Trick or Treatって」
「それが、どうした?」
その返事を聞き、先ほどとは違うそこはかとなく隙の無い笑みを浮かべる。
その笑みに神威は嫌な予感を覚えた。
「昴流…?」
「神威、お菓子をくれなかったから、僕に悪戯する権利はあるよね♪」
「!それはっ、」
「もうダメ、時間切れ」
言うと同時に、ベッドに押し倒される。
「おい待て、祭りは明日だろう!」
「いいからいいから」
「良くない!」
その夜、一日早い悪戯が決行された。
‡ ‡ ‡
そして万聖節当日の夜。
「「うわぁ……」」
いつものスーツとマントを着て現れた双児の姿を見た途端、姉妹は揃って感嘆の溜め息を洩らした。
二人の姿はそれほどしっくりとはまり、まるで本物の吸血鬼のように見えたからだ。
事実、正真正銘の吸血鬼なのだが、まさか本物の吸血鬼が、吸血鬼の仮装のフリをして万聖節に参加するとは誰も思わないだろう。
「この格好は可笑しかったかな?」
「そんな事ないわ!凄くカッコいい!!」
物言いのはっきりした姉が素直に褒めれば、その隣で妹の方も頬を染めながらこくこくと頷いてくれた。
「とっても似合ってます…」
「ありがとう、二人共。君達もとっても可愛いよ」
「ふふ、頑張って衣装を作った甲斐があったわ」
姉は昴流に向かって悪戯っぽい笑みを向けた。
姉はストレートの綺麗な黒髪に合わせ、黒いゴシック調のフリルのミニワンピースに銀色の十字架を散りばめ、悪魔の羽根と尻尾を付けていた。更に帽子からは角を生やし、外見は小悪魔そのもの。
一方妹の方は姉とは正反対に、ふんわりとした白い膝下丈のワンピースに金色の十字架を散りばめ、背中に天使の羽根を付けていた。長いウェーブの栗毛に絡められた淡い硝子のアクセサリーが、彼女の髪を柔らかく彩っている。
どちらも二人の雰囲気にぴったりで、お世辞無しにとても似合っていた。
「衣装だけじゃなく、君達も可愛いよ」
「あら、お兄さんは女の子を褒めるのが上手ね」
「だって本当の事だもの」
「どうもありがとう。お兄さん、きっと将来もてるわよ」
昴流がその台詞に「何故?」と聞き返せば「女の子は素直に褒めてもらえるのが嬉しいからよ!」とマセた答えが返ってきた。
そんな彼女に可愛いなぁと思って微笑み返すと、自分の隣から声がかかった。
「おい、行かなくていいのか」
「あ、忘れてたわ!待たせてごめんなさい」
先ほどからずっと言葉を発さなかった神威からそう言われ、姉はくるりと踵を返した。
「それじゃあ、回る家に案内するわね」
「うん、よろしくね」
「任せて!」
そう言うと彼女は妹の手を取って先を歩き出した。
街中へと入ると、そこには仮装した人間達が溢れていた。
大人から子供まで見渡す限りの街人が様々な死霊に扮装し、子供達はお菓子の袋を持ちながら家々を回っている。そこかしこの家から、決まり文句や笑い声が聞こえてくる。 その中に大人の悲鳴も混じっていたのはご愛嬌だ。
「賑やかだね」
「もちろんよ!皆楽しみにしてたんだから」
姉の上機嫌な言葉に反応するように、近くで子供の声が沸き上がった。
大掛かりな悪戯に成功したらしい子供達が家から出て来るのが見えた。
「…あれも楽しみの一つ?」
それに言葉は返って来なかったが、にんまりとした悪戯っ子特有の笑みが雄弁な答えを返してくれた。
一方、そんなやり取りをしている二人の後ろでは、相変わらず無愛想な神威と大人しげな妹が何を喋るでもなく黙々と歩いていた。
こちらの二人は特に話す事もないのか、一向に会話をする気配が無い。
しかし女の子の方は本当は話しかけたいのか、ちらちらと神威を横目に見ているのだが、無表情な神威を不機嫌と思っているのか口を開きかけては閉じてしまう。
結局声をかけられなくて落ち込み俯くと、上から声がかかった。
「……言いたい事があるならはっきり言え」
「え?」
「さっきからこっちを見てるだろう」
前を向いたまま視線すら寄越さずに言い切られる。
だがそんな態度ですら、全くこちらに関心を払っていないと思っていた彼女には嬉しいものだった。思わず薄っすらと頬が染まる。
もしかしたら、ただ他人の視線に敏感なだけなのかも知れない。
だが、それでもやはり気付いてくれた事が嬉しくて、勇気を振り絞って問いかけた。
「あの、……お祭りに誘って迷惑じゃなかったですか…?」
「何でそう思う」
「それは、その………さっきからずっと無表情だったから、もしかしたら嫌だったのかなって、それで……」
最後は尻すぼみになってしまったが、それでも彼女は視線を合わせない神威の顔を見ながら言った。しかし、自分の視線に気付くくらい気配に敏いと思った彼は、相変わらずこちらを見なかった。
視線さえ向けてくれないこの人は、一体何になら興味を示すのだろう。
「別に」
やはりちらとも視線を寄越さない神威は、ずっと前を見つめたままだ。
何となくその先を辿ると、やがてそれが彼の片割れに注がれているのだと気付いた。
「あいつが来たいと言った。それだけだ」
その一言で悟る。
彼が気にかけるのは、自身の片割れだけなのだろう。
それは、彼女の胸に冷たい事実として押し付けられた。
…気付いた瞬間、世界が白く無音となり、時間が止まったような気がした。
そして全てが戻ると同時に、寂しいような悲しいような複雑な感情に苛まれる。
それが何という感情か、そしてどんな感情から来るものなのか幼い彼女には分からず、そんな自分に激しく困惑してしまう。
だがどちらにしても気持ちは沈んでしまい、横の神威を見る事も、前を歩く二人を見る事も出来ず、彼女は足元を見て歩き続けた。
だから、前から余所見をしながら走ってくる子供達に気付かなかった。
もし前を見て歩いていたなら、そのままだと自分にぶつかると分かり避けていただろう。
けれど俯いていた彼女にはそれが分からず、ようやく足音に気付いた時にはすでに避けきれない距離になっていた。
衝撃を右肩に感じると同時に、身体のバランスが崩れた。
無意識の内に上げてしまった声に前の二人が振り返り、姉が焦った表情を浮かべるが、咄嗟の事で態勢が直せず固く目を閉じる。
次に来るのは転ぶ痛みだと思って。
---だがそれは、肩を支えられる感触によって防がれた。
「…前を見て歩け」
引き寄せられると同時に身体のバランスが取れたのが分かり、恐る恐る目を開けると、ずっと前を向いていた紫色の目が自分を見ていた。
何故、彼が自分に視線を向けているのだろう…。
さっき肩に一瞬感じた体温は、何だったのだろう……。
しばらく現状が把握出来なくて呆然としてしまう。
が、理解すると同時に頭の天辺から爪先まで一気に熱が上がった。一瞬の内にパニックになりわたわたと腕を動かすが、だからと言って何かが変わるわけでもない。
そんな彼女に神威は怪訝な表情を向けた。
「どうした」
「えっ、あ、あのっ、迷惑かけてごめんなさいっ!」
「なら余所見をするな」
「ご、ごめんなさい」
何とか返事をするが、早まった鼓動は静まらず顔の赤味もなかなか引かない。
そんなやり取りをしている二人の元へ、昴流達がやって来た。
「大丈夫!?」
「う、うん。お兄さんが助けてくれたから」
「良かった。……こらー!よそ見するんじゃないわよ!!」
姉は妹の無事を確認し安堵の表情を浮かべると、少し離れた場所で驚き立ち止まっていた子供達に向けて怒鳴った。相手は慌てて謝ると、焦ったように走って行った。
「もう!ハメを外し過ぎよ」
「私は大丈夫よ、お姉ちゃん。驚かせてごめんなさい」
「あなたもよそ見はしちゃダメよ」
そう姉が締め括ると、四人は再び歩き始めようとした。
だがその時、妹の頭の上へ声が降って来た。
「いつまで掴んでるつもりだ」
「えっ?」
声の主は神威だ。しかし、彼女には何の事なのか全く心当たりが無い。
だが、掴むと言えば手に関する事だろうと思い、ふと自分の手の先を見た。
そして彼女は再びパニックに陥った。
自分の両手が、いつの間にか彼の腕をしっかりと掴んでいたのだ。
恐らく最初の時に、気持ちを落ち着けようと無意識に縋るものを探して掴んでしまったのだろう。
「あ、ああああああの、ごごごごめんなさい~!」
もはや彼女の顔は、頭から湯気が出るんじゃないかと言うほど真っ赤だ。離した両手を再びわたわたと手を動かすが、先程よりも混乱が酷過ぎるためか一向に落ち着かない。
そんな様子に神威は眉を顰めると、無造作に彼女の左手を掴んだ。
「ふえっ!?」
「…さっさと行くぞ」
そう言うとさっさと歩き出す---相変わらず、手を繋いだままで。
これには他の二人も驚いた。
「あのっ、でも、手…」
「また転ばれる方が面倒だ」
さも彼女がお荷物のような言い方だ。実際、神威にとってはそれ以上でもそれ以下でも無いのだろうが、彼女にとっては全く違う。
歩き出した彼に着いて行くために足は動かしているが、頭の中は未だに混乱している。
それでも幾分か落ち着くと、まだ赤味が引き切らない顔に微笑みを浮かべた。
昴流と双子の姉はそんな二人に驚きつつも、再び前を歩き始めた。神威と妹の方もそれに続く。
姉は後ろの二人をちらりと振り返ると呟いた。
「あのお兄さんがあんな事するなんて、ちょっと意外だったわ」
「…そうだね」
隣から返って来た声に違和感を感じ、思わず昴流を見上げる。
今まで穏やかながらもテンポの良い会話をしていた昴流にしては、あまりにも素っ気無い声音に聞こえたのだ。
案の定、昴流は後ろへと意識を向けていた。そんな彼を、彼女はじっと見詰めた。
視線に気付いた昴流が笑顔で問いかける。
「どうかした?」
「…ううん、何でもないわ」
だが彼女はあっさり答えると、朗らかに笑って「早く行きましょう」と急かした。昴流はそれに諾と返したが、会話は先程よりもどこか散漫で薄いものになっていた。彼が道中、時折意識を後ろへ向けていたからだ。
だが彼女はそんな昴流に何を言うでもなく、特有の喰えない--でもどこか残念そうな--笑みを浮かべて横目で盗み見ていた。
しかし、それに昴流が気付く事はなかった。
やがて姉の先導に従い、一軒のこじんまりとした家に着いた。
外装には赤、青、緑を基調にした、可愛らしいデザインが施されている。
姉妹は二人で扉の前に立つと顔を見合わせ頷き合い、一緒にノッカーを二回叩くと、すぐさま扉から後ずさり距離を取った。
それを不思議に思っているとすぐに中から足音が聞こえ、音を立てて扉が開いた。あのまま立っていたなら扉とキス出来る勢いで。
中から出て来たのは、カラフルな髪を持つ三人の少女だった。
それぞれ家の外装と同じ色で纏めた魔女の仮装をしていて、姉妹と同じくとても似合っている。
「よく来たな、二人共!」
「いらっしゃいませ」
「さっさと来ないから待ちくたびれたわよ」
三人の個性が見える口調は面白いほど似ていないが、姉妹を見る優しい目は皆同じで、二人の問いかけを楽しみにしているのが一目で分かった。
その三対の目が、ふと気付いたように姉妹の後ろに立っている双児へと向けられた。
「お二人とも、その方達は?」
「宿のお客さんで、あたしたちが誘ったの!」
「お兄さんたちも双児なの」
その言葉に、三人はあっさり納得したようだ。
赤毛の少女を皮切りに全員が、いっぱい楽しんでいってくれ、と明るく声をかけてくれた。
そして軽く二、三言葉を交わした後、少女達は姉妹の方へと向き直った。
姉妹はそれに一度顔を見合わせると、口を揃えて言った。
「「Trick or Treat?」」
「「「Treat(ですわ)!」」」
少女達からも揃った答えが返り、それと同時に抱えるほどのお菓子を渡された。
「はいっ!たくさん食べてくれ!」
「今日のお菓子はアップルパイとカボチャクッキーですの」
「あんた達に悪戯されたら堪んないからね、たっくさん入れといたわよ!」
「悪戯でも良かったのに」
「だ、だめよお姉ちゃん」
そんな二人の会話に少女達が笑い、姉妹もつられて笑った。
その和やかな風景を昴流は微笑みながら、神威はいつもの無表情のままで眺めていた。
‡ ‡ ‡
あの後何軒か家を回り、祭りは賑やかながら穏やかな終わりを見せた。
「今日はありがとう!」
「こっちこそ誘ってくれてありがとう。楽しかったよ」
「またこの街に寄る事があったら、遊びに来てね」
「あの、神威お兄さん、ありがとうざいました…」
「……別に」
双児は姉妹を送り届けるとすぐに宿を出たが、二人が入り口に見送りに来てくれたため和やかな別れの時間となった。
相変わらず神威だけは素っ気無かったが、それでも二人は気分を害したりはしなかった。むしろその返事を聞いて顔を見合わせ、はにかんだ笑顔を見せてくれた。
そして双児に向き直ると、笑顔で言った。
「「さようなら」」
それに昴流は微笑みながら同じ言葉を返し、ゆっくりと踵を返した。神威は何も言わなかったが、一瞬姉妹を視線だけで振り返るとすぐに昴流の隣を歩き始めた。
そんな二人の後ろ姿が通りの角を曲がって見えなくなるまで、姉妹は手を振り続けた。
やがて完全に視界に映るのが夜の街だけになると、妹は振っていた手をパタリと身体の脇に落とした。
力無く俯いた顔に、先程までの笑顔はない。
彼女はそのままの視線で自分の左手を見つめ、それを大事そうに胸に抱き込んだ。
そんな妹の頭を、姉は自分の肩口へと抱き寄せ優しく撫でた。
「繋いでもらえて良かったね」
「…うん」
結局繋いでもらえたのは、三人の家へ着くまでの間だけだった。それ以降は、それぞれの片割れの隣を歩きながら家を回ったのだ。
消せない期待はあったけれど、彼の性格からして最後までは繋いでくれないだろうと分かっていた。
だからこれで充分だと、自然に笑みが浮かんだ。
例え短い時間でも、彼女にとっては幸せな時間だったのだから。
それでも、その笑みにはどこか翳りが伴い、相反する感情が綯い交ぜになっていた。 そんな複雑な笑みを浮かべる妹に、姉は陰で静かに微笑み返す。
----いつか、あの二人みたいに唯一の相手を見つけられますように
ひっそりとそう願う姉は、じっと自分達を見つめる視線に気付き顔を上げた。
少し先の道から同い年くらいの、菫色の目をした少年と白銀の髪をした少年が、こっちへと駆け寄ってくるのが見えた。その顔に浮かぶのは、どちらも心配げな表情だ。
姉が顔を上げたのに気付いた妹もそちらを見る。
姉妹は目を瞬かせて今日何度目か顔を見合わせた後、彼等へと笑顔を向けた。
---花の綻ぶような、愛しさに溢れた笑顔を。
姉妹と別れてすぐに、二人は人気の無い街外れまで移動した。
すでに夜も更け風が体温を奪うように吹き付けたが、それでも二人の指先は温かかった。
昴流が音の消えた街を振り返る。
「楽しかったね」
「そうか」
神威は自分の感想等は一切口にしなかったが、それでも目元は幾分か穏やかだ。
彼が表情ほど不機嫌ではなかったのを、昴流はちゃんと分かっていた。
「でも、神威があの子を気にかけたのはちょっと意外だったな」
「別に気になんかしてない」
「そう?」
普段の神威なら例え彼女が転ぼうが助けようとはしなかっただろう。なのにさりげなく助けたのは、ただの気まぐれか、はたまた雰囲気を楽しんでいたからか。
どちらにしても、昴流には面白いと言えるものではなかった。
先程少女と繋がれていた手が、自分のものへと代わっていたとしても、だ。
だから徐に彼の右手をそっと掴み上げると、指先へとキスを贈った。
「昴流?」
突然の行動に疑問符を浮かべている相手に笑みを返すと、その指先を口に含み、軽く歯を立てる。更に、指の腹を舌でチロリと舐め上げると、彼の肩が僅かに揺れた。
それを認め、昴流は指先を解放すると、最後にもう一つキスを贈った。
「君の隣もこの手も僕専用だから、ちゃんと覚えておいてね…?」
「……っ」
神威はその言葉に僅かに目を見開いたかと思うと、すぐに口を引き結び、じとっと上目遣いに睨み上げた。
「勝手にお前の所有物にするな」
「ヤダ」
にっこり笑って即答で返される。神威はそれに苦々しい顔をすると、目を逸らしながら言った。
「…お前が同じ条件を飲むなら、考えてやる」
一瞬の間。
思わず驚かされた昴流だが、すぐに我を取り戻すとこれ以上なく破顔する。こんな風に不意打ちで伝えられる気持ちが、何よりも嬉しくて。
だから返す言葉は決まっていた。
「当たり前でしょう」
そう、それは息をするのと同じくらい当然の事。
だからそれ以上の言葉を返せない。
「破るなよ」
「しないよ、そんな事」
ずっと隣に居たいのも、体温を感じていたいのも、片割れ以外存在しない。
なのに、どうして誰かに譲れるだろう。互いの今更な問いかけに、どちらも内心苦笑する。
だから視線が合わさると同時に二人は目元を和ませ、自然と手を握り直した。
そして二人が目を瞑るとそれを合図に次元移動の術が発動し、開いた道が二人を誘った。次第に術の引力が強くなり、まともに立つ事さえ難しくなる。
だが、どちらも繋いだ手は離さなかった。
---二人の姿がそこから消えても、ずっと。
‡ ‡ ‡
自分達には人と比べものにならないくらい永い時間がある。
けれど、その時間をずっと変わらずに過ごすだけじゃつまらない。
せっかく隣に大切な相手が居てくれるのだから、普段と違う時間があってもいいでしょう?
全ては、片割れの色々な表情を見たいが故。
----次の次元ではどんなお祭りがあるかな
今回付き合ってもらった時、最初に一回だけと約束したが、昴流はすでに次のイベントを心待ちにしていた。
自分に甘い彼は今回だけだと言いながら、きっとこの先もしかめっ面をしながら付き合ってくれるだろうから。
----そんなところが愛しいんだって、君は知らないだろうね
いつか、ちゃんと本音を言ってみようか。
繋いだ手から伝わる低い体温を感じながら、昴流はそっと笑った。
次の世界に新たな期待を寄せながら。
【FiN】
04 | 2024/05 | 06 |
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同属に電光石火でROM専から萌え落とされ墜落。
双児への愛が溢れる限り叫び続けます。