此処はツバサの双児吸血鬼を愛する管理人の、妄想の捌け口となっております。
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【現実逃避SS】星神
黄昏の空が藍色へと変わる頃。
室内の薄暗さにテキストの文字列を追いにくくなった神威は、ようやく勉強の手を止めた。
今まで集中していたために気が付かなかったが、とうに灯が必要な時間になっていた。
「…もうこんな時間か…」
凝り固まっていた身体を解すと、関節が嫌な悲鳴を上げた。
予定していた復習箇所まで進んでいないテキストに目を落とし、深い溜め息を吐く。
神威は放課後男の部屋に寄ってから、ココア片手にずっと試験勉強と格闘していた。
明日から期末試験が始まるのだが、正直神威は用意が出来ていなかった。
もちろん勉強は毎日真面目にしているのだが、如何せんあまり学校に行っていなかったので理解が追いつかないのだ。
時間を見ては昴流に教えて貰っているのだが、今日は仕事の都合で断られてしまった。
だから意外と学問に長けている男が帰ってきたら、付き合わせて分からない所を訊こうと思っていたのだが。
「なんで今日に限って遅いんだよ」
今やっている教科は数学だが、基本で引っ掛かってしまった箇所があるため応用がなかなか進まない。他の教科を先にやろうかとも思ったが、明日試験のある教科で一番問題のある教科のため後回しにも出来なかったのだ。
いつも自分の部屋に押しかけて来ては好き勝手していく男を思い出し、神威は苦々しげに眉を顰めた。
なんで男の傍若無人はまかり通るのに、自分の小さな希望はこうも上手く通らないのだろうか。
こんな時くらい早く帰ってきやがれ、と悪態を吐くが居ないものはしょうがない。
少し気分転換をしようと少し残ったまま冷えてしまったココアを呷り、淹れ直そうと立ち上がった。
「あ、ミス発見」
「……っ!?」
驚きに振り向く間もなく、後ろから抱きすくめられた。
同時に、桜花の濃厚な香りが神威の全身を侵食する。
「なっ、お前、いつの間に…っ」
「ついさっきですよ」
「嘘吐くなっ!」
そんな一瞬で何でミスが見つけられるんだよ!と噛み付けば、普通こんな分かりやすい基本で間違いませんよ、と嫌味な反撃を喰らった。
この男に訊こうとしたのは間違いだったかも知れないと内心いきり立ったが、ここで短気を起こしたら教えてくれる者がいなくなるのでぐっと堪える。
「数学苦手なんですか?」
「…悪いかよ」
「悪くはないですけどね、僕が困るわけじゃないですし」
その言い草にやはり頼る相手を間違えたと思い、神威は腕を振り解くと今度は我慢せずに鞄とテキストを持ち上げた。
「おや、もう帰るんですか?」
「うるせぇっ」
「僕が教えてあげますよ」
「いらんっ」
「素直じゃないですねぇ。受けて損はさせませんよ?」
----ただし授業料はもらいますが。
呟きと共に再び抱き込まれ、唇で耳を食まれると同時に内側を舐め上げられる。
「っ……、」
その感触にふるり、と一瞬身体が竦み上がる。
それに耳元で微笑を零され、吐息が更に耳を擽る。
「今日は昴流君は仕事でしょう?」
でなければ自分のところには来ないだろうと確信を持った問いに、苛立たしさが募る。
そう言われてしまえば、自分が引き下がれないのを知っていて言ってくるのだから。
だからと言って素直に頷くのも癪なので、神威は現状での精一杯で虚勢を張った。
「それに見合うだけの価値があるなら払ってやる」
そんな強気な言葉に再びクッと笑いが零された。
釈然としないものの、素直じゃないのは元からだ。
「それは君次第ですね」
「っ、うるせぇよ!」
どんなに男が上手く教えたところで、最後は結局神威の理解力に掛かっているのだと暗に言われる。
それは昴流に習っていても自分で感じている事のなので、思わず言葉に詰まってしまった。
だが、とりあえずは教えてくれると言うのだから受けておこう。
…授業料にしても、どうせ払わないと言ったところでいつも勝手にもっていかれているのだし、たまには対価をもらっても良いだろう。というか寄越せ。
「じゃあ、まずはご飯を食べてしまいましょうか」
「あぁ」
と、そこで重要な事を一つ思い出した。
今ここで釘を刺して置かなければ、後々丸め込まれてしまう。
「授業料は試験期間終わるまでお預けだからな」
---キッチンへ向かう男の足が、一瞬止まった。
【FIN】
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同属に電光石火でROM専から萌え落とされ墜落。
双児への愛が溢れる限り叫び続けます。